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【瓦せんべいにまつわるお話:歴史と製法と化学】



今日は、えみり堂にとっての特別なお菓子、『瓦せんべい』について綴りたいと思います。

一口に瓦せんべいと言っても、厚く歯ごたえのある『堅焼き』、カステラに近い食感の『柔らか焼き』まで、店によって味わいはさまざま。小麦・卵・砂糖・蜂蜜を主原料とし、型に入れて焼く『和製クッキー』とも呼称される、ほの甘い えみり堂のお菓子『瓦せんべい』。

お召し上がりの際に、えみり堂のせんべいが更に美味しくなれば幸いです。


瓦せんべいの歴史

瓦せんべいの歴史は古く、平安時代の高僧・弘法大師 空海が、唐の時代の中国にから帰国後に伝えたのが始まりと言われています。発祥地・普及時期も諸説ありますが、神戸・高松発祥2説が最有力です。


瓦せんべいの発祥:神戸と高松の物語

では、『瓦せんべい』の発祥・特徴について、神戸と高松の両方の観点から探ってみます。

どちらの瓦せんべいも独自の歴史と製造技術の発展を物語っており、歴史と文化を色濃く反映しながらも、屋根瓦を模した四角い形状は共通しています。


神戸の瓦せんべいは、江戸時代後期に登場しました。

地元の職人が瓦の形をした型でせんべいを焼き始めたことがきっかけとなります。地域の瓦作りの技術を反映したもので、特に阪神間地域で人気を博しました。

神戸の瓦せんべいは、サクサクとした食感で知られています。


一方、高松における瓦せんべいの歴史は、讃岐国(現在の香川県)に端を発します。こちらも瓦職人の技術に影響を受けたとされており、江戸時代にはすでに存在していたとされています。

香川の名産として広く親しまれ、讃岐の郷土菓子としての地位を確立しています。新鮮な鶏卵と砂糖にこだわった味わい深い甘さと独特の硬さが特徴です。


原材料

基本は、小麦、卵、砂糖が基本原材料となります。

材料の産地や素材へのこだわり、地産地消への取り組み、蜂蜜を加える等、店の数だけさまざまな工夫が存在します。


タネ作り:寝かしとグルテン

サクサクに仕上げる秘訣は生地(タネ)作り

選び抜いた小麦粉と砂糖、新鮮な鶏卵、そして蜂蜜。材料を絶妙な配合割合で混ぜ、生地の発酵工程『寝かし』を経て、タネをコクがありつつもまろやかに味を調えます。

当然、その日の温度や湿度によって生地の水分や混ざり具合が変わるため、毎日微妙に配合を調整します。

そして、せんべいの生地作りに重要なファクター『グルテン』を紹介します。

『グルテン』という言葉はご存じと思います。グルテンは、小麦粉に水分を加えてこねることでできる成分のこと。グルテンには『粘弾性』という、弾力がありながらもよく伸びる性質があります。

瓦せんべいの主原料の小麦粉は『グルテニン』(弾性)と『グリアジン』(粘性)という2性質を持つたんぱく質が含まれています。こねることで成分が絡み合いグルテンが生じます。

こねればこねるほど、粘性も弾性も強くなります。(余談ですが、グルテンの量が多く、質の強いものから順に強力粉、中力粉、薄力粉となっています。)

手作業で負荷をその腕に感じながら生地合わせを行うことで、ベストなグルテン調整を行っています。

一律に生地に負荷をかけるミキサー(ニーダー)で生地をこねてしまうと、いくら回転速度を調整しているといっても、グルテンに無理をさせる動き、いわゆる『オーバーミキシング』が懸念されます。粘りのため軽い食感が表現できません。

軽いサクサク食感に必要なグルテン調整、一貫手作業ならではの良さを味と食感で感じていただければうれしいです。


熟練の手焼き技:メイラード反応

もちろん、おいしさの秘密は焼き方にもあります。

手焼きでつくる瓦せんべいは、そのシンプルさゆえ、焼き加減など職人の技術の差が際立つお菓子と言われます。焼型に収まるようタネを流し、焦げる一歩手前まで焼いていきます

いわゆるメイラード反応をさせることで、香ばしさを出していきます。

メイラード反応(アミノ・カルボニル反応)とは、加熱により糖とアミノ酸などが反応して褐色物質『メラノイジン』ができる反応です。褐変反応と呼ばれます。

例えば、プリンのカラメル、肉や魚の照り焼き、こんがり焼けたホットケーキなどは、メイラード反応によるものと言えば分かりやすいでしょうか。

タネが多いと重いせんべいになってしまう。焼きが足りないとコクのある香りを生むことができない。

ベストな量と焼きタイミングについてはもう経験則、感覚です。

焼き上がった瓦せんべいは、熱く柔らかいうちに素早く専用の反り板(そりいた)の型にのせなければ、冷める過程で形がゆがんでしまいます。

とにかく感覚とスピード。だからこその職人でありたいです。



まとめ

瓦せんべいは、その歴史と伝統、そして店ごとの独自の製法によって、今日も多くの人々に愛されています。

技術磨きもまだまだではありますが、理屈理論・化学根拠からも、えみり堂のせんべいはもっと美味しく表現できると感じています。

当店は、神戸の瓦せんべいの伝統を大切にしつつ、新しい味の探求を続けていきます。

ぜひ、えみり堂の瓦せんべいをご賞味くださいませ。



えみり堂

〒651-0801

兵庫県神戸市兵庫区中道通7丁目3-7

【営業時間】 10:00〜17:00

【定休日】 日・祝日・年末年始



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